Hi-net連続波形データ解析の出発点
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2007年〜2009年:
大型の地震の前に、再現性のある前兆を観測できれば、地震の発生を日程的に余裕を持って予想し、
事前の対策・心構えが行き届いて被害を減らせるのではないか。
安定した予想には、継続的な観測とデータ提供がなされている情報源が必要である。
(たまに庭先に現れるカラスが3回カァと鳴いたから地震が来る、というようなものでは
知りたいときに今、危機が迫っているのかを知ることができない)
適切なものがないかと探していたところ、
Hi-netのWebサイトに連続波形画像が掲載されているのを見つけた。
この画像を見ていると、大型地震の前に普段あまりない、乱れのようなものがあるように思えた。
https://www.hinet.bosai.go.jp/strace/?LANG=ja
Hi-netにて提供されている連続波形データであれば、継続的な観測とデータ提供がなされている。
これを機械的に分析し、地震の前に現れる何か普段と違う状態を検知できれば、
地震の予想に近づくかもしれない、と考えた。
そこで、Hi-netのWebサイトから取得した連続波形データを解析し、
連続波形データのモデル化を行い、
最新の観測データと過去データから作成したモデルとの乖離度を算出、
普段とは異なる特徴を持つ波形データが現れたことを数値的に検知して
地震発生の予兆を捉えようとしていた。
しかしながら。
全国規模の連続波形データの膨大さと、コンピューター資源(CPUの処理能力、記憶装置容量など)の制限より、
関東周辺のみの限られた観測点のみの解析にとどまったことと、
解析を実施していた時期に、同地域での大型地震の発生は少なかったこと、
また、連続波形データとモデルの乖離度を
大型地震発生に結び付けて予測に活かす部分のロジックを構築するに至らず、
最近で言うところの機械学習にあたる内容は個人の余暇で行う趣味的な開発の範疇を超えていたこと、
安価または無料で利用可能なプラットフォームもなかった状況で、確定的な結論はに至らなかった。
ただし、データ取得・解析を継続していた期間内に起きた駿河湾地震(2009年8月11日発生した大型地震)
の約1か月前から、連続波形データとモデルの乖離度を順に見ていくと、普段とは異なる動きが若干ではあるが検出(※)
されており、前回の試みは、大型地震発生の予兆検出に向けて、連続波形データの異常を検知できていることに
一定の示唆を与えていると考えられた。
※駿河湾地震(2009年8月11日)発生までの振幅乖離度検出状況
※暖色系の色の●は振幅が普段よりも大きいことを示す。
寒色系の色の●は振幅が普段よりも小さいことを示す。
マークの大きさは、単位時間あたりの異常値が多かったことを示す
その後暫く、この解析は手を付けないまま放置していたが、
2011年の東日本大震災をはじめ、多くの大型地震が発生した。
加えて、民間で手ごろに入手可能なコンピューターの性能が当時に比べて各段に向上したことと、
実際に発生した大型地震とデータの変動の関連性を検出できる技術(ディープラーニング)が進展し、
簡易に利用可能な無料のツールが出回り始めたことから、前回未解決に終わった部分に
一定の前進が見込める状況となってきた。
そこで、前回から一歩進んで、Hi-net連続波形データと地震の発生履歴に基づいた地震発生予測の試みを開始した。
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